カタルです。
さて、今回も前回に引き続き、思春期となった教え子との奮闘激【 思春期と言うジュニア育成の難題… エピソード3 】を書いて行こうと思います。
前回の記事【 思春期と言う難題 エピソード2 】を読みたたい方は、下からどうぞ⇩
今回、少し注目して欲しいのが、関東予選に出場した2人の教え子の受け答えとプレー内容の差です…
ちなみにもう1人の教え子は同級生で、主役の教え子に勝ったことはありません…
どうしてもテニスの成長と精神の成長を僕らコーチも同期して考えてしまいがちですが、精神の成長はまた少し違う観点で見る必要が有ると分かるエピソードだと思います!
この話しは、前に書いた、【 教え子の成長する瞬間に立ち会える喜び…①、② 】の出来事から1年後、2年後とその子がどう変わり成長して行ったのかを書いた続編です!
前の記事【 関東予選 前日 ~ 1日目 】を読みたい方は、下からどうぞ⇩
前の記事【 関東予選 2日目 】を読みたい方は、下からどうぞ⇩
今回の内容には、その時の僕の悩みや苛立ち、教え子の苦悩など、結構重い内容も書かれていますので、そこも踏まえてお読みください。
- ❏ 関東予選…【 前日練習 】( 選手としての意識… )
- ❏ 関東予選…【 1回戦 】( 大舞台で発揮された集中力… )
- ❏ 関東予選…【 2回戦 】( 発動するメンタル問題… )
- ❏ 「分からない…」思考停止する教え子…
- ❏ 褒められ続けた事で生まれている障害…
❏ 関東予選…【 前日練習 】( 選手としての意識… )
関東予選の前日、僕はU12のカテゴリーに出場する2人の教え子を連れ、試合会場で練習を行っていました。
昼前に会場入りし、昼過ぎから練習を開始したのですが、2人の教え子の遠足に来てるかのようなチャラ付いたした雰囲気に、僕は少しイラついていました…
僕「 ちょっと2人とも集合しようか! 」
…
僕「 2人はここに何しに来たの? 」
2人「 …関東に出るためです… 」
僕「 出るだけのために来たの? 思い出作り? 」
2人「 …勝ち上がって全国出たいと思ってます! 」
僕「 ホントに思ってるの? 」
2人「 はい! 」
僕「 だとしたら… 今2人の練習してる雰囲気は何? 」
僕「 とてもじゃないけど、今回勝ち上がって全国行きたいと思ってる選手の練習には見えなかったんだけど! 」
「…」
僕「 …これは、関東に出場する子達に毎回言う事なんだけど… 」
僕「 コーチは、もちろん試合に勝ち上がって欲しいとも思っているけど、それ以上に関東の独特な雰囲気と緊張感の中でのプレーで、少しでも成長して帰って欲しいと思っているんだよ! 」
僕「 その上で、目の前の試合に全力で挑んで勝ち上がる経験が出来たら最高でしょ! 」
2人「 はい! 」
僕「 ここまで一緒に来て楽しい気持ちになるのは分かるけど、しっかり気持ちを切り替えて集中したプレーをして行こう! 」
2人「 ハイ! 」
その後の2人の練習は集中した良いものへと変わりましたが、まだまだ選手としての意識が低いのだと改めて感じる一幕でした…
❏ 関東予選…【 1回戦 】( 大舞台で発揮された集中力… )
ついに関東予選1回戦が始まりました!
今回のドローは、出場している2人の教え子同士が1回勝つと当たってしまうと言う何とも言えない組み合わせでしたが、まずはお互いが1回戦を突破することに集中するようにと言い聞かせ、送り出しました!
まずはシードとなった教え子の試合でしたが、相手選手が教え子のショットに全く対応できず、ほとんどポイントを奪われること無く 6-0 6-0 で勝ち上がりました。
〈 やっぱり相手との力の差があって、自分が主導権を握れてる時のプレーはホント落ち着いて良いプレーなんだよな… 〉
〈 これが相手が強くなった時に出来なくなるのがホント歯がゆい… 〉
まだメンタル問題が今大会で発動するかは分かりませんでしたが、日ごろのメンタルトレーニングなどの取り組み方からも、まだ改善出来ていないであろうことを予想していました…
次はもう一人の教え子の試合です!
相手選手は下の年代の子でしたが、教え子より一回り以上大きな体格をしていました。
プレ一の方は、スピンの掛かった強力なショットを打ってきますがミスも多く、教え子のプレーが粘り強さとカウンターを主体にしてると言う事も有って、激競りのファイナルセットにもつれ込みます!
しかし、ファイナルセットは序盤から相手の積極的な攻めに押し込まれ、差を付けられてしまいます…
その後は持ち前の粘り強さで挽回しましたが、最後は相手の子の攻撃と集中力が勝った形で、ファイナル 3ー6 で競り負けました…
〈 負けたけど、よく頑張ったなぁ~ 〉
〈 実際、相手の子は中々強かった… 〉
〈 教え子にとっては過去最高のプレーだったかもしれないな! 〉
約3時間の熱戦を終えた教え子にねぎらいの言葉を掛けつつアドバイスを送ります。
僕「 お疲れ様! 良く最後まで頑張ったね! 」
教え子「 自分でも頑張ったと思います! …でもファイナルは… 勝てなくて悔しいです… 」
僕「 そうだね… 」
僕「 全体的に言うと、相手の子の攻めが強力で苦しい展開が多かったけど、よく食らいついてたよ! 」
教え子「ハイ! とにかく最後まで追いかけようと思って動き回りました! 」
僕「 うん! ナイスプレーだったね! 」
僕「 そして中盤は、相手のショットにカウンターを合わせて取るポイントも増えていたし、自分から攻めて取ったポイントも有って、コーチが今まで見た中で一番良いプレーが出来てたと思うよ! 」
教え子「ハイ! 自分でもそう思います! 」
僕「 ただファイナルセットに入ってからは、少し集中力が切れた感じで足が止まっちゃたね… 」
教え子「 はい… 最初集中できませんでした… 」
僕「セカンドセットでかなり良い集中が出来てたからね! それが途切れた時に集中出来なくなることは良くあるんだよ… 逆にああいう場面でしっかりメンタルコントロールして、更に集中力を上げたりできるようになれたらもっと良い選手になれるよ! 」
教え子「 ハイ! 頑張ります! 」
前に書いた【 メンタルコントロール 】についての記事を読みたい方は、下からどうぞ⇩
僕「 今回は負けはしたけど、こういう大きな大会でいつも以上のプレーが出来た経験は今後に生きると思うよ! またさらに強くなって戻って来よう! 」
教え子「 ハイ! 」
ホント中々良い試合でした!
特にこの大舞台でいつも以上のプレーと集中力が出せた事に大きな価値があると感じていました。
そして次は、もう一人の教え子がこの子と戦います!
実際、中々の強敵です…
恐らく勝てる実力はあるとは思いますが、簡単には行かないでしょう…
そして、年下と言う事がメンタル的にどう影響するのか…
これに勝てば、ランキングが高い教え子は全国出場が決まります!
相手選手が数分間休憩した後、2回戦が始まりました!
❏ 関東予選…【 2回戦 】( 発動するメンタル問題… )
試合が始まり、予想外なことが起こっていました!
1回戦で激戦を制した相手選手が、さっきと同じ子なのか?と疑うぐらい、ミスの無いプレーで教え子を圧倒して行きます!
1回戦の相手がほとんど返すことが出来なかった教え子のショットは、その子にカウンターでストレートに打ち返されどんどんとポイントを奪われて行きます…
〈 これは… 1回戦あんなにミスしてたのに、まるで別人だぞ… 〉
〈 元々フラット系のショットにタイミング合わせるのが得意だったのかもな… 〉
〈 このまま打ち込んでるだけだと普通に負けそうだけど… それでも… プレーは変えないだろうな… 〉
ここまで、教え子の意思を尊重し、フラット系のショットで攻撃する練習やショット自体の強化を行っていましたが、僕自身はそれだけでは勝てなくなると考えていたので、全体練習の中で、プレーのベースとなる厚い当たりのスピンを教え、それを使ったラリーの練習を地道に行っていました…
ただ… ラリー中に打ち込んでプレーを終わらせたりと、それをちゃんと身に付けて使おうとする気配は全くありませんでしたが…
スコアが0-4となり…
〈 …このままだと普通に負けるなこれは… 〉
と覚悟を決めていた時…
教え子のプレーに変化が生まれます!
これまで一回も使おうとして来なかったスピン系のボールを使い始め、相手を崩してから打ち込みに行く理想的な形でポイントを重ねて行きます!
そこからはゲームを与えることなく逆転し、ファーストセットを取り切ります!
〈 おー! プレーを変えた!! 〉
〈 この感じで最後まで行ければしっかり勝ち切れそうだな! 〉
…しかし…
…またもや事件が起こります…
2st目のスコアも4ー0となり、このまま行けると思っていた5ゲーム目…
打ち込んだボールを相手が何とか返し、もう一度打ったボールを更に返し、最後に打ち込みに行ったボールがネットミスとなって失点した瞬間、ラケットで地面を叩き、下を向いてダラダラと歩き始めます…
〈 えっ? まさか… 〉
そして、次のポイントを吹っ飛ばし大アウト…
その後も吹っ飛ばしたアウトを繰り返し、そこから1ゲームも取れずにセットを奪われます…
〈 マジかぁ~… あの状況から出る? 〉
あまりにもショッキングな光景に、観に来ていた親御さんと話しをしました…
僕「 この症状は… ほんとにヤバいです… 」
僕「 今まで僕が見たストレスの高い試合は全部、この『 ヒステリー 』を起こしたみたいな状態になってるんですよね… 」
親御さん「 ホント『 ヒステリー 』って感じですね… 今までもこんなのありましたけど、今回のはひどい… 」
親御さん「 … なんでこんなことになっちゃうんでしょう…? 」
僕「 外から見てる以上にコート上の選手のストレスって大きいので、試合になるとメンタルのコントロールが出来なくなってしまう選手は多いのですが… 」
僕「 お子さんの場合、自分の思い通りにならないことが続くと発動しちゃうことが多いみたいですね… 」
僕「 …これは僕の予想なんですが、かなり早い段階で試合でも勝てるようになったりしたのも有って、今まで褒められすぎてるんじゃないかと思うんです… 」
僕「 逆に、怒られたり、上手く行かなくてストレスを感じたりした経験があまり無いんじゃないですかね? 」
「…」
親御さん「 …実を言うと… 兄弟たちの中で、あの子だけあまり手が掛からなかったので、ほとんど世話を焼いたことも叱ったことも無いんです… 」
親御さん「 学校でも褒められることが多いみたいで、三者面談の時に先生に言われたのが、『 お子さんはパーフェクトで悪い所がありません 』なんです… 」
僕「 マジですか!? それは言われた方は逆にきついですねぇ… 」
僕「 恐らくそう見られてることを意識して、失敗しない消極的な選択しか出来なくなりかねませんね… 」
前に書いた【 褒める影響 】についての記事を読みたい方は、下からどうぞ⇩
前に書いた【 褒める 】についての記事を読みたい方は、下からどうぞ⇩
「…」
僕「実は、関東出場が決まってからここ数ヶ月、お子さんが全く練習で新しいことに挑戦しなくなったので、バーンアウトしそうなんじゃないかとも思って理由を関東前に聞いたんです… 」
僕「 その時の答えが、『 大きな大会の前だからプレーを変えたくなかった 』だったんですが… そう言う褒め方をされて来たのがかなり影響してそうですね… 」
親御さん「 そうだったんですね… 」
僕「 この試合、このまま負けるか復活するかはまだ分かりませんけど、どちらにしてもしっかりメンタルトレーニングをする必要が有りますね… 」
親御さん「 ですね… 」
僕「 今までは本人に『 自覚 』も改善する意識も無かったので、この大会を切っ掛けに少しでも『 自覚 』することが出来れば、改善するチャンスが出てくると思います! 」
…この話し合いは、聞かないと分からないような教え子の状態を知る、良い機会になりました!
さて試合の方はと言うと…
2st後半のままの勢いでファイナルも0-3となり、かなり厳しい状況でしたが…
そこまでは、萎えて打たれたボールを追わずに諦めていた教え子が、必死にボールを追って打ち返えそうとするようになり、ここまでは全く感じられなかった「 勝ちたい 」と言う気持ちがやっと出てきた感じです!
苦しみながらも何とか1ゲームを取り返し、1-3としたところから教え子のプレーが立ち直り、その後のプレーはここまでが嘘のような優位なものとなり、逆転勝利となりました。
〈 …勝ちはしたっけど… 問題が大きすぎて手放しには喜べないな… 〉
❏ 「分からない…」思考停止する教え子…
試合を終えた教え子にプレーとメンタリティーの確認をしながら話しをします。
僕「 お疲れ様 」
僕「 試合はどうだった? 」
教え子「 相手の… スピンボールが打ちずらかった… 」
僕「 確かに序盤はタイミング合わないミスが多かったね… 逆に相手の子の方がタイミングが合ってて、ミス無くコースに入ってきたのはきつかったね… 」
教え子( コクリ… と頷く… )
僕「 でもファーストセットの途中からスピン掛けたボールも混ぜながらラリーしたことで、相手のミスが出たり甘くなったボールを決めたりする場面が増えて逆転できたけど自分では意識した? 」
教え子「 分かんない… 」
〈 分かんない…? 〉
僕「 分かんないって? 0-4から挽回して1st取った時のプレーは? 」
教え子「 タイミングが合って来たから… 」
〈 どういうことだ? 〉
〈 ホントにプレーが変わったことにも気が付いてないのか? 〉
僕「 そうか… 」
僕「 でも良いプレーが勝ちに繋がったのは確かだから、その事は覚えておきなよ! 」
教え子「 …はい… 」
僕「 じゃあもう一つ… 」
僕「 2stの4-0の時、相手に粘られて失点した後『 ヒステリー 』を起こしたような状態になたけど、あの時どういう感情だったの? 」
「…」
教え子「 …分からない… 」
僕「 イライラしてボールを吹っ飛ばしたりしてるように見えたけど… 」
教え子「 …分からない… 覚えてない… 」
〈 う~ん… これは困った… 〉
〈 失敗を責められているように感じて思考停止してるのか? 〉
〈 どちらにしろ、あまりポジティブには話しを聞けてない気がするな… 〉
僕「 そうか… 」
僕「 とにかくあの『 ヒステリー 』を起こすような状態は、今後のためにも改善しないといけないと思うから、大会が終わったら真剣にメントレに取り組もう! 」
教え子「 …はい… 」
本当は…
今回のプレーの内容から、メンタリティーの改善を図りたかったのですが…
ハッキリ言って、会話になりません…
ホント、2人で話した時の会話が成り立たないのです…
もう一人の教え子はむしろ受け答えが達者で、その子と一緒にいるときは便乗してしゃべるのですが、僕と2人の時はどんどんしゃべらなくなって来ています…
❏ 褒められ続けた事で生まれている障害…
この試合中に親御さんから話しを聞き、改めて教え子と話したことで分かってきたのが、僕がプレーに付いて聞いたり、アドバイスをしている状態を、攻められたり否定されてるように受け止めてるのではないかと言う事でした…
これまで、日常生活でもテニスのプレーに対しても、褒められて否定されたことがほとんどなかったことで生まれた障害…
もはや教え子は、アドバイスされたことすらプラスに受け取れない状態になっているのです…
〈 …このままじゃホント教えられない… 〉
そんな思いにストレスが溜まるのを感じますが…
仕方ありません…
これをひっくるめて《 我慢して待つ 》と決めたのですから…
次の3回戦の相手は、少し前に粘られて負けたことが有ると言う年下の子…
また嫌な予感がします…
恐らく、今日の試合の中で出来ていた相手を崩してからの攻撃をしっかりできれば勝てるチャンスがあると思うのですが… 果たしてどうなるか…
色々と吐き出したい気持ちを『 今はまだ時期じゃない 』と押し殺し、次に意識を向けるカタルでした。
…【 思春期と言うジュニア育成の難題… エピソード4 】に続く…
~おしまい~