テニスコーチ カタルが語るブログ

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先を見据えることの重要性! 全日本ジュニア U18 出場選手を例に考える、ジュニア育成の注意点!

 

カタルです。

 

ジュニアの成長には、最終的にどうなるのか予想の付かない部分が多くあります!

 

僕もこれまで何人ものジュニア選手と携わってきましたが、幼少期に感じるセンスと言うものが、必ずしも最終的な能力を保証するものではないとつくづく感じています!

 

そこで今回は、そんなジュニアの成長過程をざっとイメージしやすくするために、今年の 全日本ジュニア U18 に出場していた選手達を例にしたデータを作ってみました!

 

 

 

 

❏ 2024年度、全日本ジュニア U18 出場選手の過去の軌跡

このデータは、今年から2年ずつさかのぼり、今回の 全日本ジュニア U18 出場選手がU16、U14、U12 と下の年代の時の 全日本ジュニア ではどのような戦績を出していたのかを現したものです!

 

中には途中で海外に拠点を移した選手や、早生まれですでにジュニアを卒業した選手、下の年代からエージアップして勝ち上がった選手などもいるので、あくまで今年の 全日本ジュニア U18 出場者と言う視点からのデータです!

 

ここでデータを見る前に一つ問題です!

U18 で 全日本ジュニア に出場していた選手が U12 に何人いると思いますか?

少し予想してみて下さい!

ちなみに当時の 全日本ジュニア U12 は16シードまでの選手の1Rが[ Bay ]となるドローだったので出場選手は48人です!

 

ではまず男子選手のデータからどうぞ!

 

2024年 U18全日本ジュニア出場者のデータ( 男子 )

 

※ 年代別での[ ー ]表記は、選手がその年代の全日本ジュニアには出場していないことを表しています。

※ U14は残念ながらコロナ過で中止となり詳しいデータはありません。

出場選手の代表地域の表記は U18 出場時のものなので、過去の代表地域と異なることが有ります。

( このデータは全日本ジュニア過去の結果を参考にしています。 )

 

男子選手の答えは10人でした!

 

当たりましたか?

 

プラスで言うと、男子選手では ウィンブルドンジュニア ベスト4 に入り、先日行われた 全日本選手権 でベスト16に入った 本田 尚也( ほんだ なおや )選手が海外に拠点を移しているので、合わせて考えれば11人と言ったところでしょうか!

ちなみに 本田 選手の U12 の全日本ジュニアの戦績はベスト8でした。

 

本田 尚也( ほんだ なおや )選手について書いた記事はこちらから⇩

tenniscoachkataru.com

 

更に言うと、2年前のU16に出場していた選手の数は29人で、半分以上がU18で初出場の選手でした!( 35人の中の3人の選手はU12からの返り咲きです。 )

 

 

それでは女子選手の方も男子選手の結果を参考に同じく予想してみて下さい!

ではデータをどうぞ!

 

2024年 U18全日本ジュニア出場者のデータ( 女子 )

 

※ 年代別での[ ー ]表記は、選手がその年代の全日本ジュニアには出場していないことを表しています。

※ U14は残念ながらコロナ過で中止となり詳しいデータはありません。

出場選手の代表地域の表記は U18 出場時のものなので、過去の代表地域と異なることが有ります。

( このデータは全日本ジュニア過去の結果を参考にしています。 )

 

何と、女子選手も全く同じ10人でした!

 

ちなみに女子は、 斎藤 咲良( さいとう さら )選手、 クロスリー 真優( くろすりー まゆ )選手、 小池 愛菜( こいけ えな )選手、 木下 晴結( きのした はゆ )選手の4人は、プロ転向したり海外に拠点を移したりと 全日本ジュニア には出場していないので、そこも合わせれば14人と言ったところでしょうか!

 

ちなみにこの4選手が 全日本ジュニア U12 でどうだったかと言うと、 斎藤 選手がベスト8、クロスリー 選手が準優勝、小池 選手がベスト8、木下 選手が2Rと言った感じでした!

 

4選手の1人 、斎藤 咲良( さいとう さら )選手について書いた記事はこちらから⇩

tenniscoachkataru.com

 

更に、U16で 全日本ジュニア に出場していたのは27人で、やはり半分以上の選手がU18で全日本ジュニア初出場の選手でした!( 同じく3人の選手は返り咲きです。 )

 

 

❏ 各年代で見る、勝ってる選手の特徴

さて、この結果を見て皆さんはどのように感じましたか?

 

データを見る限り、元々全国上位にいた選手がそのまま上位にいる場合も有りますが、多くの選手が入れ替わっていて、U12の頃のメンバーとU18のメンバーが全然違っていると言う現象が起こっています!

 

これは、U12 ⇨ U14 ⇨ U16 ⇨ U18 と年齢が上がるにつれ、体格の変化や平均的なスキルの向上により全体のプレーの質が変わって行く事で起こります!

 

ここで、各年代で勝ち上がっている選手の特徴を上げて行きたいと思います。

 

※ ここから説明する各世代の特徴は、あくまで僕の見解です。

 

U12で勝っている選手の特徴と補足

 

※ ここで上げている特徴は各単独のもので、重複はしても全てを兼ね備えていないといけないと言う意味ではありません。

 

U12の特徴

・幼少期から試合に出始めていて、経験が豊富。

・U12にしては高い技術やゲーム性を持っている。

・動きが良く、粘り強くてミスが少ない。

・体格が良く、パワフルなショットが打てる。

・特化したプレーを持っていて、それをやり続けるメンタルがある。

etc.…

 

補足

U12では、全体的に体格も技術も未熟な子が多く、勝ち上がっている子とのレベル差も大きいため、大差で試合が終わることが多くあります!

すでに身長が大きい子などの優位性も高く、ラリーしてるだけで相手が返せなくなると言う光景をよく目にします。

その中でも全日本ジュニアに出場するような選手達には基本的に安定感と高い技術も持ち合わせていることが多く、中には見てる方が驚くようなテクニックやショットを見せる子なんかもいたりして、年々ハイレベルになっていると感じます!

 

 

U14で勝っている選手の特徴と補足

 

※ ここで上げている特徴は各単独のもので、重複はしても全てを兼ね備えていないといけないと言う意味ではありません。。

 

U14の特徴

・U12で勝ち上がる経験をしている。

・ストロークの質やコントロールがU12の頃よりレベルアップしている。

・U14にしては高い技術やゲーム性を持っている。

・動きが良く、粘り強くてミスが少ない。

・体格が良くパワフルなショットが打てる。

・しっかりと自分から攻めるプレーが出来る。

etc.…

 

補足

U14とU12は特徴が似通っていますが、U12のころより全体のレベルが底上げされたイメージで、上位互換とも言える状態だと思います。

中にはU12の頃は勝ててなかった子が頭角を現し始めることもあり、特に女子は大きくメンバーが入れ替わっていることもあります。

逆に男子はU12の頃の力関係に大きな変化が起こりづらく、ある程度の順位の入れ替わりは有りつつ全国上位選手のメンツはそこまで変わらない傾向にあります。

このU14の時期は、成長時期の関係で体格の差が大きくなりショットの質も変わって来るので、下の年代の子が上の年代の子に勝つのが一番難しい時期でもあります!

 


U16で勝っている選手の特徴と補足

※ ここで上げている特徴は各単独のもので、重複はしても全てを兼ね備えていないといけないと言う意味ではありません。

U16の特徴
・ラリーするボール自体が力強くパワーがある。
・体感がしっかりしていて、ボディーバランスが良い。
・攻撃的なショットにも安定感があり、ポイントを取り切ることが出来る。
・サーブのキープ率が高い。
・全体的に高い技術を持っていて、プレー中に織り交ぜることが出来る。
etc.…

 補足
U16になると成長期による体格の変化やテクニックの向上などによってプレーの内容が大きく変わり、全体的にパワフルなプレーが主体になって行きます。
それに共ない、U12、U14と結果を出していた選手達の中でも、技術の高さや粘り強さで優位に立っていた選手が勝てなくなったり、元から体格が良くパワーで勝っていた選手の優位性が消え、周りの選手との実力差が埋まって苦戦するようになるのもこの年代です!
逆に、ここまで無名だった選手が身長が伸びてパワーのあるショットを打てるようになったり、プレーの幅が広がったことで頭角を現し、一気にトップへと昇って行く事もあります。
このU16までにどのようなプレーを身に付けているかがジュニア時代の一つの目安になっていて、今後伸びるか伸びないかの分岐点にもなり得る年代と言えます!
 
 

U18で勝っている選手の特徴と補足

※ ここで上げている特徴は各単独のもので、重複はしても全てを兼ね備えていないといけないと言う意味ではありません。

U18の特徴
・ベースとなるボールの質が高く、オフェンスもディフェンスも安定している。
・強いフィジカルを持っていて、最後までプレーの質が落ちない。
・最後まで追えるフットワークが有り、鋭いカウンターが打てる。
・パワフルなショットで攻撃することが出来る。
・相手を崩す展開力や攻撃の形を持っている。
・ネットプレーでもポイントを取れるスキルが有る。
・サーブが強力でキープ率が高い。
etc.…

 補足
U18になると高校入学でスクールを離れる選手が多く、プレー内容の変化は少なくなる印象ですが、トレーニングなどでフィジカルが強化され、動けてミスが少ない選手が多くなります。
その分どの選手も同じようなプレーを身に着けていることが多く、レベルの差がより無くなって行く傾向にも有ります。
特に男子は、各選手のサーブが強力になり、簡単にはブレイク出来ない状況になって来るので、一度ブレイクされたら負ける可能性が有ると言うストレスの中でのキープや、ワンチャンスを生み出すための駆け引きと、それをものにする集中力なども重要な要素になって行きます。
U18では、U16までは攻撃的なショットで優位になっていた選手が粘られて負ける場面などもよく見られ、フィジカルの強化でハイレベルになった守備力の優位性も上がって行きます。
最終的に攻守ともにハイレベルなプレーが出来る選手が勝ち残れるようになるのがこの年代だと言えます!
 
 


❏ 年代が上がるにつれて勝てなくなって行く理由

ここまで各世代の特徴を説明して来ましたが、これを見比べて行けば、U12で勝っていた選手がU18で勝てなくなって行くいくつかの理由がなんとなく分かって来るのではないでしょうか?

その要素をいくつか挙げると…
 
要素1
 U12のカテゴリーで勝つことだけを考えたプレーを身に付け、その後もプレーを大きく変えられなかった場合…
年代が上がり体格もテクニックも上達した選手には通用しなくなって行きます。

要素2
その年代の中では特化していたプレーを武器にし、その後そのプレー以外の上達が乏しい場合…
年代が上がると、その特化していたプレー自体が周りも出来ることになり、更には対応されることも増えて行くので、自分自身の優位性を失ったことで勝てなくなって行きます。

要素3
ベースとなるラリーの質や対応力を身に付けられていない場合…
年齢が上がるにつれ、各選手の球の伸びや重さ、回転量など、普通にラリーしているボール自体の質が変わって行きます。
そのボールに対応したり、自らも打てるようになっていない選手は、ラリーしてるだけで追い込まれたりミスをする状況になってしまい、勝つのが難しくなって行きます。

要素4
サーブ力とリターン能力を向上させれていない場合…
何よりも大きな差となって行くのがサーブです!
U12やU14では、ほとんどのポイントがラリーで決まり、キープとブレイクがまちまちになりやすいのに比べ、U16、U18ではサービスキープが当たり前になって行き、キープ率が低い選手が勝ち上がるのは非常に厳しくなります!
そして、そんなサーブを崩すためのリターン能力の高さが、勝敗を分ける一つの要素になって行くのです!
この2つをレベルアップ出来ていない選手が上の年代で勝つことは、ほとんど不可能と言えると思います。
 

 

僕が考える年代が上がるにつれて勝てなくなって行く理由は大まかにこんな感じです。( 細かく言えばまだありますが… )


そんな要素も伴って…
年代が上がると「 12歳の頃はあの子強かったよね… 」と言われている選手がとても多いと言うのが現実として有ます…

この事に輪をかけてしまっていると感じるのが、U12で結果を出させようと焦り、熱を入れすぎた取り組みをしてしまう親御さんの存在です!
 
この早く結果を出させようとする考え方や行動が、要素1の状態を作り出してしまい…
結果、を身に付けれずに年齢が上がってしまうと言う苦しい状況を生み出してしまうのです!
 

❏ 先を見据えた考えと、努力する意識の強さが道を分ける

ここまでの説明で勘違いしないで欲しいのが、U12で結果を出してはいけないと言う意味ではありません!

言い方は悪いですが…
所詮はまだ12歳レベルでの結果だと言う事と…
ここから先の成長が大切だと言う事を、選手も周りの大人も理解しているかどうかだと思うのです!

これは…
たまたま昔知り合った、当時は大学生だった選手に聞いた話しなのですが…
その選手が16歳の頃、12歳の 錦織 圭( にしこり けい )選手と試合をしたことが有ったらしいのです。
 
その選手は正直かなりビビっていたらしく…
4つも下の選手に負けたくないと言う思いとプレシャーでヤバかったと言っていました…
しかし試合が始まってみると、想像していたほどのプレーでは無いと感じ…
6-1 6-1( うろ覚えなので正確なスコアでは無いかもしれません… )と言うスコアで勝つことが出来たと言うことでした。

その当時、U12の全国大会3つで優勝し、世代でダントツの実力が有った 錦織 選手ですら、上のカテゴリーの選手と戦えばそれぐらいの力の差が有ったと言う事です!

つまり…
ジュニア時代で重要なのは、早く結果を出す事では無く、最終的に高いレベルでプレーできる実力を付けれたかどうかで、その為の先を見据えた1つ1つの取り組みと考え方が、更なる道を開く切っ掛けにもなって行くと思うのです!
 

❏ まとめ

僕が長年ジュニアを教えて来て感じているのが、子供達の最終的な上達レベルを、幼少期に測ることなんか出来ないと言う事です!

 

これは…

仮に、言われたことがすぐ出来る器用な子と、言われたことが中々出来るようにならない不器用な子がいたとしても、最終的に不器用な子の方が強くなると言うことをよく目にして来たから言えることです!

 

もしその中に判断する要素が有るとすれば、その子が競技に対する熱意と努力し続けられる意志の強さを持っているかどうかじゃないかと思います!

ただそれも、年齢が上がってから身に付いて来る事も有り、やはり推し量ることは出来ないと感じるのです!

 

……

2024年9月6日に全日本ジュニアの全日程が終了しました!

 

出場していた教え子達の中には今大会で中々の結果を出してくれた子もいました。

ただ、ここまで説明してきたように本当に重要なのはその後の取り組み方です!

 

もちろん教え子が良い結果を出すことはとても嬉しいことなのですが、大きく褒めたり祝ったりはしないように心がけました…

 

これは、教えている僕らコーチが目の前の結果に一喜一憂しすぎてしまったとすれば、その結果を出した選手を調子づかせてしまったり、成長を止めてしまう考え方に誘導してしまうかもしれないからです!

 

常に先を見据えた考え方を忘れずに、教え子の可能性を潰さないようにと気を引き締めるカタルでした。

 

 

~おしまい~