テニスコーチ カタルが語るブログ

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現日本ランクNO.1の内島 萌夏( うちじま もゆか )選手のジュニア時代の軌跡から学ぶ理想の育成!

 

カタルです。

 

全米オープンもついにベスト4が出そろいましたね!

 

中でも注目なのが、ベスト4に男女ともアメリカの選手が2人ずつ勝ち上がっていることではないでしょうか!

 

そんな光景を見ていると、ついついこれが日本人選手になる日が来て欲しい!

なんてことを思ってしまいます…

 

 

今大会の日本人選手の戦績は、1、2Rで全員敗退と言うものでしたが…

その中でも、現日本ランクNO.1の 内島 萌夏( うちじま もゆか )選手の1Rでのプレーが今後の可能性を感じる輝きを放っていましたので、そんな 内島 選手のジュニア時代の話しも交えながら紹介して行きたいと思います!

 

内島 萌夏( うちじま もゆか )選手のデータ(2024/9/6)

 

・現世界ランク 64位(2024/9/6)

・最高世界ランク 59位

 

・「 安藤証券 」と2022年11月14に所属契約

・2019年4月にプロ転向

・出身 静岡県袋井市( 産まれたのはマレーシアのクアラルンプール )

・生年月日 2001年8月11日(23歳)

・身長 173㎝

・体重65㎏

・右利き

・出身校 一ツ葉高等学校

・ジュニア時代の所属スクール 昭和の森ジュニアテニススクール( 現 モリパークテニスガーデン )

・現在の拠点 中国の広州

 

 

 

 

tenniscoachkataru.com

 

内島 選手は、先に紹介した 柴原 瑛菜( しばはら えな )選手と同様に、173㎝と言う海外選手と並んでも見劣りしない体格をしていて、フォアバック共に強力なショットを持っています。

特にフォアの重く伸びのあるスッピンボールがかなり強力な武器となっていて、回り込みフォアハンドからの攻撃が相手から主導権を奪う切っ掛けになっています!

 

全米オープン一回戦の タマラ・コルパチュ 選手との対戦では、1st はサーブの確率が悪く、ショットの制度もかなり低かったため、粘られて自爆してしまう形で取られてしまいましたが、2stと3stでのプレイは見事でした!

サーブの確率が上がったことで積極的なショットが増え、回り込みフォアハンドなどからの攻撃が相手を追い込みプレシャーを掛けるプレーへとつながっていきました!

最後は粘られ苦戦する場面もありましたが見事な逆転勝利となりました!

 

 

❏ 実は遅咲きの内島選手

ここで注目したいのが内島 選手の幼少期です!

内島 選手はテニスを始めたのが9歳と周りの選手に比べて遅かったのもあって、U12、U14では全日本ジュニアに出場出来ておらず、よく言うエリート街道を進んできた選手ではありませんでした…

それでも、全国小学生でノーシードながらベスト4に入ると言う成績を残したことから、勝てるポテンシャルは十分あったのだとは思いますが、その後そんなに目立った戦績もなかったのと、同じスクールに全日本ジュニアで上位シードになるような同級生の選手がいたことで、そこまでダントツで強いと言った目立った存在ではなかったと言うのがその頃の印象でした。

 

実は、内島 選手がジュニア時代に所属していた昭和の森ジュニアテニススクール( 現 モリパークテニスガーデン )とは交流が有り、昔は練習試合をちょこちょこ行っていました!

当時の教え子と内島 選手との練習試合の結果は、勝ったり負けたりと言ったところだったと思います。

 

中学生になり、身長が170㎝となった 内島 選手は、ショットの威力が同年代だけではなく上の年代の選手と比べても飛び抜けたものとなって行きます!

そんな、周りを寄せ付けない攻撃的なテニスを確立させた 内島 選手は、15歳の時に全国中学生で単複を優勝し、それを切っ掛けに一気にトップ選手としての実力をつけて行きます!

そして翌年の全日本ジュニア( U18 )を16歳で優勝し、その年に挑戦したITF女子サーキトの【 カンガルーカップ国際女子オープンテニス 】で決勝まで勝ち上がり、奈良 くるみ( なら くるみ )選手に敗れ準優勝となりましたが、プロへの道を歩もうとする大きな切っ掛けになったんじゃないかと思います!

 

 

❏ 理想的な成長の仕方を考える…

この 内島 選手の成長の仕方は、今年の全豪ジュニアを優勝し、世界ジュニアランクNO.1( 現3位 )となった 坂本 玲( さかもと れい )選手とも似ています!

坂本 選手は、U12、U14と大きな戦績はありませんでしたが、中学時代に身長が190㎝代まで伸びたことで頭角を現し、全国中学生の優勝を切っ掛けに世界へと挑戦し始めたと言う同じような道を歩んでいます!

 

そんな、高身長と言う体格の変化と共に世界で戦える実力を付けて行った 内島 選手と 坂本 選手のような成長の仕方は、ジュニアを教えている僕らの取り組み方を深く考えさせます…

実際、U12、U14と勝っていた選手がU16、U18と徐々に勝てなくなって行く姿を多く見て来た僕としては、世界と言う舞台を目指す選手が進むべき成長の軌跡は、早めに成長する 早熟 ではなく遅れて成長する 晩熟 だと思うのです!

 

ただ、この成長の仕方で難しいのが、親御さんや選手本人の考え方とモチベーションの維持です…

多くの人は幼少期に結果が出たか出ないかで一喜一憂し、出ないと無理だと感じたり、焦ったりする傾向に有ります…

しかし、本当に大切なのは子供の時どれだけ強かったか?では無く、最終的に世界に通用するレベルに到達したか?と言う事で、これを理解した上で幼少期から結果を出した子と、幼少期に結果を出すことだけに力を入れて来た子とでは、その後の成長度合いに差が出る可能性が大いにあると思うのです!

 

それを踏まえて僕が考える理想的な成長の仕方は…

 

【 晩熟になるための未完成な早熟を目指す 】

 

です!

 

これは、幼少期にはその子の成長スピードに合わせた将来を見据えたプレーを磨き、結果が出たり高いスキルを身に着けれたとしても、更にレベルを上げるための挑戦をし続ける事で、更なる成長が15歳以降にも訪れる準備をしておくと言う意味です!

そのためには幼少期からしっかりとした将来の目標を持つことが大切で、その目標を見据えた考え方と取り組み方を身につけていくことで、結果が有る無いにかかわらず、身体がしっかりして来る15歳以降に、本格的なレベルアップが訪れる可能性が高くなると思うのです!

 

 

❏ 理想的な成長を目指すためにコーチが考えるべきこと!

そんな、理想の成長を目指す上で僕らコーチが考えるべき問題が、選手の身体の成長を阻害せずに能力を伸ばせるかどうかでは無いでしょうか?

 

その上で僕が常々気になっているのが、幼少期から結果を出すために行いがちな過度なフィジカルトレーニングの成長期への影響です!

 

実際、しっかりトレーニングを行うことは結果を出しやすくする大きな要素になって行きますが、その負荷が過度に上がった時、身長が伸びなくなると言う影響が出てしまっているのではないかと疑っているのです!

 

これまでも幼少期に結果を出していた選手が小降りになってしまうことが多いと言う傾向があり、今回の全日本ジュニアのU14の選手達を見ていても、特に女子選手の体格ががっちりと筋肉質で、身長が小さい子が多いと感じました…

 

それに対して、U16、U18では長身の子が多くなり、今まで名前を見たことが無い無名の選手も多く出場していたりしています!

 

これは本当に気を付けなければと思うのです…

U12、U14で努力を続け能力も高く育っていた選手達が、成長期を経て高身長となった選手達に苦しめられ、勝てなくなって行くと言う苦しい現実が待っているかもしれないのですから…

 

それらを踏まえて僕らコーチが考えるべきなのは…

U12、U14は技術と経験を向上させつつ、成長期を阻害しないことも考えた身体作りを心掛け、それと共に身長を伸ばす為の栄養や睡眠と言った部分にも気を使った取り組みをして行き、その成長に伴った将来を見据えたプレーを身に着けれるようにして行く事だと思うのです!

 

 

❏ 遺伝を超えて身長を伸ばす為の取り組みも考える…

身長を伸ばすと言う話しになると、遺伝と言うものがついて回ります…

両親の身長から将来の身長を計算するサイトが有ったりするように、何もしなければそうなる可能性が高いのかもしれません…

 

しかし、そんな遺伝とは関係なく身長が大幅に伸びている子もいたりすることに僕は注目しています!

 

ちなみに僕の教え子の中にも両親とも身長が150㎝前後と小柄なのに、180㎝まで伸びた兄弟がいます!

聞けばお母さんが栄養に気を使いながら食事を作っていたらしく、2人とも中高と「 暇さえあれば寝まくっていた 」とも言っていました!

 

前に2mを超えるバレーボール日本代表選手が子供からの質問で「 何でそんなに身長が大きくなれたんですか? 」と聞かれた時、「 とにかく中学時代は寝てた記憶しかないぐらい寝てました 」と答えてました!

 

よく身長を伸ばす為に必要なこととして言われているのが、《 栄養 》《 睡眠 》《 ジャンプ系の運動 》《 ストレッチ 》《 ストレスの無い生活 》などですが、この話しを聞くと、特に《 栄養 》と《 睡眠 》を成長期の時期に確保することが重要なんじゃないかと思えてきます!

もちろん遺伝の影響は大きいとは思いますが…

ただそこに、それ以外での可能性が有るのであれば、試す価値は十分に有ると思うのです!

 

 

❏ まとめ

昔は早く成長し結果を出す 早熟 の選手がプロになって行くのが育成の流れだったと思いますが、近年ではその流れが変わって来てるように感じています!

 

現に、現在世界ランクNO.1の ヤニック・シナ― 選手が本格的にテニスを始めたのが14歳だったと言いますし、グランドスラムを4回優勝した元世界ランクNO.1の 大阪 なおみ 選手のジュニア時代はほとんど結果を出していない無名の選手だったと言います…

そもそもジュニアには目線を置かずに一般のITFに挑戦し続けていたようです。

 

今大会で男女ともベスト4に2人ずつ勝ち上がったアメリカでは、大学で本格的に力を付け、卒業後にプロとなり世界ランク上位になっている選手が多く出ています!

正に 晩熟 の選手育成をしていると言えるのではないでしょうか!

 

それに比べ日本国内では、ジュニアで結果を出せたらプロになろうと考えると言う傾向が根付いているようで、そのために早く結果を出そうと選手も親御さんも焦っているように感じます…

 

その結果、ジュニア時代がゴールの様になり、ジュニア卒業で引退する子なんかも多く出てしまっています…

 

ジュニア時代に全力を注ぎ…

結果が出せなければ自分の可能性を信じられなくなり辞めて行く…

そんな流れや考え方を変えることが、多くの日本人選手がグランドスラムで勝ち上がる未来に繋がるのではないかと僕は思うのです!!

 

 

「 世界に通用するプロになりたい! 」

そんな教え子達の思いが実現する方法を…

真剣に考え続けるカタルでした。

 

 

~おしまい~