カタルです。
長年コーチとしてジュニアの子達と触れ合っていると、子供にとってはハードルが高いことって結構あるものなんだと再認識する場面に出くわします!
もちろんこれは個人差が有ることですが、大人から見ると大したことないと感じるようなことでも、その子にとってはかなりハードルの高いことだったりするのです…
❏ 小さくも大きなハードルを越えて行く事…
子供が自分にとってのハードルを乗り越えるには何かしらの切っ掛けが必要だったりするものです!
ここでは、そんな切っ掛けを掴み、成長して行った子供達のエピソードを紹介したいと思います!
◎ 兄弟で入校した小学1年生…
数年前、一般ジュニアクラスに入校した兄弟がいました。
上の子は6年生、下の子が1年生と言う年の離れた兄弟で、下の子がテニスをやってみたいと言ったことで上の子も付き添いとして入校したと言う事でした。
その当時、下の子は人見知りがひどく、入校時にみんなで自己紹介をした時には、その場で黙ってフリーズしてしまったので、これは無理だと判断して上の子に代わりに言ってもらいました…
その後も上の子の後ろをついて回る感じで、レッスン中に一言もしゃべらないと言う日々を過ごしていた下の子…
〈 …これはテニスが楽しいとは思えてないんじゃないだろうか… 〉
と心配していたのですが…
上の子曰く、テニスが楽しくて家で素振りをしたりしていると言うのです!
〈えーー!! この状態で?? 〉
正直、その楽しんでる感じはみじんも伝わって来ませんでしたが、楽しんでいるならよかったと一安心しました…
それから半年後…
上の子の話しでは、家ではめちゃくちゃしゃべると言う事だったので、僕から積極的に話しかけたり、問いかけたりして行ったところ、片言のような会話なら出来るようになってきていました。
そんなある日、新たに入校した小4の子が振替で来たことで、前に出来なかった自己紹介タイムが訪れます!
案の定自分の名前が言えずにフリーズしてしまった下の子…
その時僕は、今回は少し粘ってみようと心に決めました!
上の子が受け舟を出そうとしたのを今回は静止し…
他の子にも「 少し待って 」とお願いし…
「 今回はきっと行けるはず! 待つから頑張って言ってごらん 」
何度も言をうとしてはつまり…
もじもじすること…
5分…
10分…
〈 こりゃ今回も無理かなぁ… 流石にこれ以上は… 〉
そんなことを思った矢先…
「 1年生の○○です… 」
「 よろしくお願いします! 」
!?
「 おお!言えた!! 」
待ってくれてた子達も大盛り上がりとなり、その後の練習も今までに無いぐらい積極的に動き回った下の子!
今では、会話もしっかり出来るようになり、後から入った子にやり方を説明したりするぐらいの成長を見せています!
人見知りの1年生が乗り越えたハードルが、その子にとって大きな自信に変わった瞬間でした!
◎ 進級が怖い…
ある日、一般ジュニアの初級クラスから上のクラスに進級して来た兄弟がいました。
1人は5年生、もう1人は4年生と言う年子の兄弟で、入校から1年半ぐらいたった時の事でした!
その当時の上のクラスには、選手クラスの一番下のレベルの子や、選手クラスには入っていないけど【 すくすくのっぽくん 】などの試合には出ている子などがいて、傍から見るとかなりハイレベルな練習が行われているように見えたと思います!
そんな練習風景を隣で目の当たりにしていたその兄弟は、上に上がることを怖がり進級を拒否し続けていました…
実際は少しレベル分けをしながら練習するので、いきなりその子達と一緒に打ち合ったりはしないのですが、そのことを見てる本人たちが分かる訳もなく…
更に、遊びの要素が多い初級クラスに比べ、本格的にテニスの練習している上のクラスとの雰囲気の違いも、その子達にとっては高いハードルとなっていました…
そんな中、何度も担当コーチに促された兄弟は渋々進級を決め、その日を迎えることになったのでした…
当日、上の子が元からいる子達と一緒に体操などを行っている中、下の子は入り口で固まって動かなくなりフリーズ状態になっていました…
〈 …これは… 中々厳しい… 〉
何を話しかけてもピクリとも動かなくなってしまっているその子に…
「 今日は下のクラスで良いからレッスン入りな 」
と声をかけ、初級クラスの担当コーチに迎えに来てもらってやっと動き出す感じでした…
…ここまでの状態になる子は初めてでしたが、考えてみれば大人でも新しい環境に飛び込むのは緊張するものです…
恐らく下の子はこう言った環境の変化に慣れておらず、人見知りも伴って今回はこのような状態になってしまったのでしょう…
次の週…
〈 あの感じだと今日も厳しいだろうな… 〉
と思いながらコートに行くと、その子が上の子と一緒にコートの中にいました!
どうやら、上の子が先週のレッスンがどうだったかを家で伝えたらしく…
「 楽しかったよ! 」
と言う言葉でやってみようと決断したみたいでした!
この乗り越え方は兄弟あるあるな気もしていて…
どちらかがどちらかの行動を見てから遅れて行動し始める的な所が兄弟にはある気がします!
その後の2人は、元からいた子達とも普通に打ち合えるようになり、試合にも出たりするようになりました!
❏ ハードルを避けて通る代償…
ここまで説明したハードルを越えて行く経験は、多かれ少なかれ誰もが通ってきた道だと思いますが、大人になった今ではその過程を忘れてしまってることがほとんどです!
そして親となり、我が子を見守る立場となった時…
その乗り越えるべきハードルの前で苦しんでいる我が子を助ける思いで避けて通らせたり、親御さん自らが前に出て全てを解決しようとするなどの行動に出てしまう!なんてことも有ったりします!
そんな子供のために良かれと思って行った行動が子供の成長を妨げてしまっていたり、苦手なことを苦手のままにしてしまい、後々大きな問題に発展してしまうと言うケースを今までも多く見てきました!
それでは、そんな状況を生んでしまった例を少し紹介したいと思います!
◎ 何でも手伝う親御さん…
これは、小学2年生の時に選手クラスに入った子の話しです。
その子の事はキッズクラスから教えていて、選手クラスに入った時には結構上手だなと感じるレベルまで上達していました。
しかし…
選手クラスになってから明るみになって来たのが、親御さんの過保護とも言える行動でした…
それを目撃したのは練習前の駐車場…
テニスウェアを万歳させて着せてあげてたことに始まり、ズボンをはくのを手伝い、靴下を履かせて上げ、テニスシューズを履いたら靴ひもを結んであげる…など…
それを両親が手分けしながらやっていました…
思えばキッズクラスの時も、子供がボール拾いをしているのを見て両親共にコートに入って来て手伝い始めたり、コーディネイション( ボールを上や下に突くなどの練習 )上手く出来ていない姿を見て「 私達もやって見せて良いですか? 」と言ってコートに入ってきたりと…
中々「 んっ! 」と思う行動をしていたのですが、すべて断ったことで言わなくなっていたので忘れていました…
〈 これはヤバいな… 〉
その出来事を目撃してから、本人に「 自分で出来ることは自分でやる様にしなさい! 」と伝え、親御さんにも「 最初は時間が掛かても出来るようになるので、自分で出来ることは自分でやらせるようにしてください。 」と伝えました…
それから1年後の冬…
低年齢の選手を集めた合宿を行い、その子も参加していました。
その時僕は、もう一つの分校の方に移動していたのでその子の事はもう教えていませんでしたが、その子は集まった同じ年の子の中でも上手い方でした。
しかし、そのテニスの上手さとは関係なく衝撃的だったのが、今だに靴ひもが結べるようになってないと言う事実でした…
「 コーチ靴ひもがほどけちゃったので結んでください! 」
と足を差し出すその子…
「 はぁ! そんなもの自分で結びなさい!! 」
と怒る担当コーチと言う構図を見た時…
〈 これは今だにやってもらってるな… 〉
と確信しました…
あれから1年です…
この成長のしてなさはおいおいテニスにも影響してきそうだと僕は感じていました…
そこから2年が過ぎたころ、その時の合宿でその子に2‐6で負けていた子が、大会で6‐1で勝ったと言う報告を受けました!
担当コーチに話しを聞くと、スクール内でも周りにどんどん抜かされていて、最近では実力的にも下の方になってきていると言う事でした…
この一件は、ぱっと聞いただけだとテニスの成長とのつながりが分かりづらいかもしれませんが…
このなんでも手伝われて自分から出来ることを増やせていないと言う状態は、自分で考えたり行動したりする能力の欠落を生み、出来ないことや苦手なことに積極的に挑戦すると言う考え方自体が出来なくなくなってしまいます。
そしてこれが、精神的な成長も遅らせる事にもつながり、自分が上手く行かない状況下でふてくされてやる気を失ったり、だだをこねてヒステリーを起こすなどのメンタル的な問題も引き起こすことにもなってしまうのです!
現にその子は考え方や行動が年齢より幼く感じられることが多く、言われないと行動できなかったり、話しをしっかり聞けなかったり、きつい練習やトレーニングを一生懸命取り組むことが出来なかったりと数々の問題が発生しているようでした…
そんな一つ一つの積み重ねが周りとの差となって行き、中学の頃には同年代の子に全く勝てない選手となっていました…
後々話しを聞くと、その親御さんが着替えを手伝うと言う状態が、中1の頃に担当コーチが強く言うまで続いていたみたいで…
この過剰な親御さんの行動が、その子が身に付けるべき能力の習得を妨げ、テニスの成長にもかなりの影響を与えたと考えられる一件でした…
◎苦手なことから逃げ続けた結果…
次は、中学2年生の時に他クラブの選手クラスから移籍して来た子の話しです。
その子は、こちらの選手クラスに仲が良い子がいると言う理由で移籍してきたのですが、驚くことにコーチ達とほとんど会話が出来ないと言う問題を抱えていました…
引っ込み思案と言う言葉で片づけてしまえばそうなのなのですが…
これが常に物静かでしゃべらないと言うわけでは無く、友達同士で会話している時はワイワイとうるさいぐらいにしゃべっているのに、いざコーチや友達以外の子と話すとなると挨拶が出来ず、返事や受け答えもほとんど出来ないと言う状態になるのです…
これは、前のスクールで何かトラウマになるようなことでもあったんじゃないか?とすら思いましたが、本人や周りに聞いても特にそういうことは無いと言いうことでした…
実は、僕がこの問題についてここまで言うのには理由が有ります!
それは、選手クラスと言うものに所属する上で、基本どのスクールでも挨拶や受け答えに対して厳しく言われることがほとんどで、選手として幼少期から活動しているこの子が、中2と言う年齢までこのような状態のままと言う事自体が、今までに無い異例なことだったからなのです!
もちろん今までの教え子の中にもシャイであまり会話が出来なかった子は何人もいましたが、選手クラスに入った事を切っ掛けに、徐々に挨拶や受け答えが出来るようになって行き、最終的には自分の考えや意見なども言えるようになって行きました!
これは、ここまでに説明して来た本人にとってのハードルを、選手として強くなりたいと言う思いから一つ一つ乗り越え成長して来た結果と言えるものです!
つまり、その成長が無いこの子の現状は…
これまでの選手生活で、この乗り越えるべきハードルを何かしらの理由で越えて来ていないと考えられるのです!
そんな子が入校してから数ヶ月…
その頃には、この子がそうなってしまった理由が分かって来ていました!
それは、その子にとってストレスが掛かるようなことが有るたびに親御さんがその状況から逃がしてると言うものでした!
例えば、挨拶や受け答えに関して注意された日が有ったとすると親御さんが「 うちの子はこういうの苦手なんです 」とフォローしに来て、下手すると数日休ませたりします…
この結果、初めのうちは本人も克服しようとするそぶりを見せていた事も、一切取り組む姿勢がなくなってしまい、練習でも苦手なことにトライしようとする意識は全くない状態になってしまいました…
それから1年が過ぎ、高校入学と共にスクールを移籍したその子は、そのスクールや高校でも問題のある行動をとってしまうと聞きました…
コーチに怒られてフリーズして動かなくなったり、プレーが上手く行かなくてペアが話しかけてもシカとして会話にならなかったりと、やはりハードルを越えてこなかった代償がかなり大きく残っているようでした…
元々は少し人見知りと言う越えることのできる小さなハードルだったものを、避けて逃げ続けてしまった結果、越えることが出来ない巨大な壁にまで成長させてしまった極端な例でした…
❏ まとめ
長年コーチとしてジュニアに携わっていると、そんなちょっとしたハードルに立ち向かい、乗り越える経験をした子供達が、精神的に大きく成長して行く姿を目にする機会に出くわします!
そんな子供達の成長する姿を見ることも、コーチとしての楽しみの一つだと僕は思っています!
しかし…
「 かわいい子には旅をさせろ! 」 とはよく言ったもので…
我が子かわいさに失敗や挫折をさせないように育てるより、あえて苦難の道を歩ませていた方が子供達はは大きく成長するものです!
親御さんが思っている以上に子供達はタフで、苦しんだり悲しんだりを経験した分そこから立ち直った時のパワーは、他には代えがたいものになっていたりするのです!
「 若い頃の苦労は買ってでもせよ! 」なんて言葉も有る様に、苦しい経験や葛藤などが、将来に向けて必要な成長の積み重なって行くのだと、周りの大人も理解している必要が有るのだと思います!
周りの大人が勇気をもって見守り続けることの大切さを、改めて考えさせられるカタルでした。
~おしまい~