テニスコーチ カタルが語るブログ

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思春期と言うジュニア育成の難題… エピソード1 《 僕が我慢を始めた日… 》

 

カタルです。

 

ジュニアの育成をしていると、上手く行ってると思っている時も、決して油断してはいけないのだと思い知らされる出来事があったりします…

特にそれは、思春期 と言うジュニアならではの心境の変化から起こることが多く…

例えば、傍から見ると育成が順調に進んでいるように見える全国上位の選手でも…

その内部では、選手もコーチも悩んでいたり、苦しんだりしていることも有ったりするのです!

 

 

今回は、これまでのジュニア育成において過去一番難しく感じ、教える側の我慢も必要になることを改めて実感させられた出来事を5部に分けて書いて行こうと思います。

これは、前回、前々回と書いた、【 教え子の成長する瞬間に立ち会える喜び…①、② 】の出来事から1年後、2年後とその子がどう変わり成長して行ったのかを書いた続編です!

 

前々回の記事【 関東予選 前日 ~ 1日目 】を読みたい方は、下からどうぞ⇩

tenniscoachkataru.com

 

前回の記事【 関東予選 2日目 】を読みたい方は、下からどうぞ⇩

tenniscoachkataru.com

 

 

今回の内容では、その時の僕の悩みや苛立ち、教え子の苦悩など、結構重い内容も書かれていますので、そこも踏まえてお読みください。

 

 

 

 

❏ どんどんと実力を付けて行く教え子… 

関東予選を終え、負けはしたものの、試合の中で自信を付けた教え子は、その後見る見るうちに上達して行きます…

 

教えたことをどんどんと吸収し、時には大人顔負けのショットやテクニックを見せたりと、明らかに今の年齢から逸脱したレベルへと到達していました!

 

試合に出れば、U12の下のグレードでは連続優勝し、試しに出てみた上の年代のU14の大会でも優勝するなど、しっかりと戦績を収めて行く姿に、親御さんや僕を含めた周りの関係者も、今後の成長に大きな期待をし、明るい未来が訪れることを疑っていませんでした…

 

 

…この時…

徐々に生まれ始めていたその教え子の中でのメンタル的問題に、当時の僕は気が付けていませんでした…

僕自身、順調に成長してると感じる教え子の練習姿に、間違いなく油断していたのだと思います…

 

 

❏ 『 傲慢 』? あらわになったメンタル問題…

その 違和感 に気が付き始めたのは、関東予選から約半年がたったころでした…

 

U12の一番上のグレードに出場していた教え子が、ベスト4まで勝ち上がっていると言う連絡が入り、久々に試合を観に行きました。

 

相手は、全国を経験している子でしたが、「 今なら勝てるのではないだろうか? 」と、最近の教え子の成長度合いからそんなことを思いながら、期待に胸を膨らませて観戦しました。

 

…しかし…

そこで観た試合内容は、僕が思い描いていたものとは大分違うものでした…

 

そのプレーは非常に淡白で、打ってエースを取ったかと思うと、すぐさまアウト…

大事なポイントでも簡単にミスをしてゲームを与えたりと、ゲームを取るための判断や我慢があまり出来ていないように感じられました…

 

半年前の関東予選の時には、大事なポイントで食らいついたり我慢強くラリーしたりと、ゲームを取るための判断や集中力の向上を感じるプレーをしていたのですが…

 

プレーの内容はさておき技術面だけで言うと、全体的には前より上達している部分が多くありました。

サーブはセカンドの確率が上がり、ファーストも良いところに入ればノータッチエースが取れたりとパワーアップしていましたし、打つショットも明らかに威力が増していて、コースにしっかり打ったボールは相手が追えないような強力な物になっていました!

ただ、このショットの威力向上で早くポイントを取ることになれてしまったのか、ラリーが長くなるとミスをする、不安定なプレーにもなってしまっていたのです!

 

〈 これは… ショットに走り過ぎてベースのラリーが無くなってる… 〉

〈 ここ最近は、試合結果の報告を受けるだけだったから、てっきり良くなっていると思っていたプレーが、こんな内容になっていようとは… 〉

 

恐らくU12のカテゴリーならこのショットだけで勝てる相手は多いのでしょう…

現に今回の相手の子も、そのショットに振り遅れたりとミスが多く、競った試合内容にはなっていました…

 

しかし、流石全国を経験している選手なだけのことはあり、徐々にショットに対応し、ミスを減らしていきます…

 

そして、相手のプレーが良くなり分が悪くなって来た時、これまで見たことが無かった教え子のメンタル的問題が現れます…

 

それは、『 ヒステリー 』を起こしてると言う表現が妥当じゃないかと思えるような行動で…

2st 目の終盤、チャンスボールをネットミスした後に起こりました!

 

下を向き… ダラダラと歩いて移動をし…

 

次のポイントで、フェンスまで吹っ飛ばす大アウト、更に次のポイントでも無理やり打って大アウト、更に次も… 3連続大アウトでゲームを失い、次の自分のサービスゲームでもそのプレーを続け、あっさりとマッチポイントでもミスをして負けてしまいました…

 

結果は、 4-6 4-6 …

 

このスコアだけ見れば、格上の相手によく検討したと言えるかもしれませんが、中身は全然そんなスッキリしたものではありません…

 

〈 なんだこれは! 〉

〈 自分が上手く行かなくなった事に『 ヒステリー 』を起こしたような終わり方… 〉

 

この時、親御さんが前に負けた試合のことで話していたことを思い出しました…

 

「 どうも自分より年下の子と試合するとダメみたいで、今回も、返されて返されて、無理やり打ちに行って自爆しての繰り返しで負けちゃったんです… 最近下の子にこう言う負け方するこことが多くて… 」

 

その時は…

「 基本、年下と試合するのはみんな嫌な物なんですよね… 今は、打ち込むボールがまだ不安定だったりする時も有ると思うので、そこがしっかりしてくれば、そういう粘ってくる子に自爆して負けました、ってことも減って来ると思いますよ! 」

 

と答えていたのですが…

この試合内容を観た感じはちょっと違う…

 

もしかして、年下の子にショットを返されたことに対して不満を感じ、今回の様に『 ヒステリー 』を起こした結果なのでは無いか?

 

…その時、僕の頭にフッと浮かんだのは…

 

『 傲慢 』

 

になっているんじゃないだろうか?と言うものでした…

 

原因は?

褒められすぎて調子に乗っているのか?

 

とにかくこれは、今後自分が楽勝で勝てる相手以外の時は常に出る可能性があるんじゃないだろうか?

 

今回、試合を観に来ていなければこれには気が付けなかった… 

しかし、大問題だぞこれは…

今後、関東、全国と勝ち上がろうと思っても、このメンタル問題がある限りかなり厳しい…

 

ここまで順調だと思っていたことが、問題だらけだったことにショックを受けつつ、今後どうして行くべきか思いを巡らせていました…

 

 

❏ 感じる『 違和感 』… 生まれて来た『自我 』…

試合を終え、うなだれて出て来た教え子に、「 どうだった? 」と声を掛けました…

少しの沈黙の末、「 全然ダメだた… 」と一言だけ答え泣き出しました…

一旦落ち着かせるために時間を置き、泣き止んで落ち着いたことを確認してから今日の試合内容についての話しをし、アドバイスをしました…

 

しかし…

その時僕は、あるもう一つの『 違和感 』を感じていました…

この子は今、聞いているようで聞いていない、聞き流しているだけの状態じゃないだろうか?と…

 

その時、思い出されたのが、ここ最近の練習中もこの『 違和感 』を感じていたと言うこと…

 

これは結果を出したことで調子に乗っているのか?

反抗期?勝ってることから来るプライドか?

思春期からくる自尊心?

 

しかし、練習中不真面目なわけでもなく、態度が悪いわけでもない…

特に調子に乗ったような言動や行動も無い…

…これは過去一番分かりずらい…

 

しいて言うなら、最近口数が減り、受け答えも片言の様になってきてることは少し気になってはいました…

 

試合の結果などを聞いても、「 今日はフォアが入った… 」だけだったりと…

よくよく考えたら半年前の関東予選の時の方が、しっかりと受け答えできていたでは無いだろうか…

 

〈 このはっきりしない『 違和感 』はいったい何なんだ? 〉

〈 思春期からくるものなんだろうか? 〉

 

一通り話した後、試しに

 

「 自分では、今後どんなプレーをして行きたいと思っているの? 」

 

と、質問を投げかけてみました。

 

すると…

 

「 粘るのはヤダ… どんどん… 攻撃して行きたい… 」

 

片言っぽい受け答えでしたが、本人の強い意思を感じました。

 

〈 なるほど… それであのプレーだったのか… 〉

〈 だから今話していても、自分の考えと合わないと思うものに対して、聞き流すような、納得してないような態度なのかもしれない… 〉

 

これは『 自我 』

 

そしてこの子の場合…

表に出なくて分かりずらいだけで、本当は相当頑固なんだと感じました!

 

今までは言われたことを一生懸命やっていただけだった子が、今は自分の考えでやりたいと思ったことをやろうとしている…

これはある意味成長!…なんですが…

それを表に出さず、自分の中だけで処理して判断していると言うのは、教える側としてはかなり厄介な状態です… 

 

〈 恐らく今のプレーを続けたら、そのうち勝てなくなるだろう… 〉

〈 ここで無理やり押さえつけてプレーを変えさせると言う手段も有るけれど、この頑固さではきっと上手く行かないし、それをしたいとも思わない… 〉

〈 そして何より、本人の攻撃したいと言う気持ちを尊重し、そこを伸ばしていきたい!  〉

 

そんなことを考えながら…

今後、僕自身がどんな選択をしながら日々教えて行くのかが一番重要になると感じていました!

 

 

❏ 問題の改善に向けて… 《 我慢強く待つ 》と言う選択!

何気なく観に行った教え子の試合で、様々な問題を突き付けられた僕は、それらをすぐに改善するのは難しいと感じていました…

 

それは、試合後にその子と話しをたり、観察したことで、こんなことが分かってきたからです…

 その子がかなり頑固で、何でも自分が納得しないと行動しようとしなくっなてると言うこと…

 

それにより、人から学ぼうと言う姿勢が薄くなって来ていて、誰のアドバイスもあまり聞き入れていないと言うこと…

 

怒られたり、プレーに対しての否定をされると、より話しを聞かなくなると言うこと…

 

その上、思考も知識もまだまだ子供で、分かってないことが多すぎると言うこと…

これは相当厄介です…

本当は自分の意思を持ち行動することはとても良いことですし、コーチの言いなりになるだけではなく、自分で考え、時には意見をぶつけることも大切なことなのですが、まだ小学生の時点で、学んで変わろうとする意識まで無くなってしまうとなると話しが変わってきます…

 

 

そこで僕がまず考えたのが、その子の

 

《 心の成長を我慢強く待つ! 》

 

と言うことでした!

 

その心の成長を促す取り組みとして考えたのが、その子だけではなくチーム全体を巻き込んだ思考の共有でした。

ちょこちょこ全員を集め、例え話しや僕の体験談なども交えながら、色々な知識や考え方を伝えて行き、全員で話し合ったり意見を言い合うことで、チームごと思考を変えて行くことを促し続けました!

 

技術面でも、本人がやりたいと思っている攻撃を重点的に教えつつ、今後、必ず必要になるであろうプレーや技術を全体練習として密かに身に付けさせて行き、いつの日か本人が必要と感じれるようになった時、すぐに取り出せるような《 仕掛け 》をしておこうと試みました!

 

その代わり、プレーの内容については言いすぎないように《 我慢 》をし、試合に負けた時にだけ必要なことを言い聞かせることにしました!

 

こんな感じで気持ちよく教えることを《 我慢 》し、本人が選手としても、人としても成長するする日を《 待つ 》ことにしたのです。

 

 

…そして…

もう一つの大きな課題である『 ヒステリー 』状態になると言うメンタリティーの問題は、【 怒りのコントロール 】などのメンタルトレーニングを行いながら、改善して行く取り組みをしていましたが、これには本人が本気で改善したいと考えることが重要になるので、どこかで強く『 自覚 』する切っ掛けが必要だと感じていました!

 

 

❏ 思春期での子供達の悩み…

この思春期前半の子達は、『 自我 』の目覚めから何かしらの悩みや心境の変化が起こり始め、その影響が多かれ少なかれ現れます…

 

恐らく、その対応に悩まされてるコーチや親御さんも多いのではないでしょうか?

 

そして… 

最初にバーンアウトする選手が出始めるのも、この時期です…

 

今までも、周りと自分を比べたり、親御さんへの反抗心だったり、時にはホントに些細なことが切っ掛けで何かしらの理由を付け、辞めると言う選択をした子なんかも多く見てきました…

僕としては、先を考えていれば今目の前の出来事はそこまで重要ではないと伝え続けているつもりなのですが…

実際、今現在を生きている子供達の中には、そうは考えられない子がいるのも事実なのです…

 

そして今回、この思春期による様々な影響が、先に結果が出ていると言うことも重なって、中々大きな問題に発展してしまいました…

 

ただ…

その子にやる気が無いわけでも、頑張っていないわけでもないのです…

 

この状況は僕としても不本意な物ものですが、恐らく教え子自身も悩み苦しんでいるのは間違いないはずです!

 

こんな状態を、何とか早く改善出来ない物だろうか…

《 我慢 》すると決めながらも、早く普通に教えたいと熱望するカタルでした。

 

…【 思春期と言うジュニア育成の難題… エピソード2 】に続く…

 

 

~おしまい~