カタルです。
今回は、僕自身が日本のジュニア育成にストップをかけていると感じ、年々不信感を募らせている高校部活について語って行こうと思います。
❏ 本格的に成長するのは高校の時期!
僕は、ジュニアで最もレベルアップ出来る重要な時期が、高校時代だと思っています!
もちろんこれは、高校からテニスを始めた子がいきなり勝てるような成長を見せると言う意味ではなく…
ここまで真剣にテニスに取り組み努力して来た子の【 心・技・体 】が整うことで、本格的に実力をつけることが出来る時期だと言う事です!
ジュニア時代の成長スピードには個人差があり、U12、U14で勝ち抜いていくのは、その年齢に見合わない能力を発揮している子だと言えます!
しかし、U16、U18と体格がしっかりし始めると、今まで出来なかった技術が出来るようになったり、サーブやストロークの威力が変わったりと、そこまで優位にプレーしていた選手達との差が埋まり始め、そこに精神的な成長や、フットワークなどのフィジカル面の強化も加わることで、無名だった選手が一気に頭角を現し、一気に上位へと勝ち進む!なんてことが起こったりするのです!
❏ スクールを禁止する高校部活…
しかし、この高校時代には一つの大きな壁が存在しています…
それは…
スクールに通うことを禁止とし、部活のみでの練習を強要する強豪と言われている高校がかなり多いと言う事です!
そして…
そんな強豪校に入学し、卒業した元教え子が口々に言うのが…
「 高校時代が一番伸びなかった… 」
と言う苦渋の言葉です!
もちろん全員がそうなる訳ではありません…
しっかりと高校部活に順応し、更なる成長を見せる子達も少なからずいます…
ただ…
その大切な時期に成長出来ないと絶望し、目標を見失ったり、テニス自体を辞めてしまった教え子たちを多く見つ続けて来たことが、僕の高校部活に対する不信感をより強固にしているのです!
❏ スクールとは違う高校部活の現実!
基本選手を多く育てているスクールでは、各選手の技術や能力をアップさせることを目的に、コーチや専属のトレーナーなどが練習やトレーニングを日々考え、より良くなる方法を試行錯誤しています。
では、高校部活ではどんなものになるのでしょうか?
《 強豪校ならば凄いコーチがいて、素晴らしい練習や育成が行われているはず!》
《 入学してレベルの高い選手と練習していれば、きっと強くなれる! 》
そんな思いで入学を決める選手がほとんどだと思いますが…
現実はそんなに甘くはありません…
ここで、そんな内容が想像できるいくつかの例をあげて行きたいと思います。
① 地方の強豪校に推薦で入学した教え子の場合…
「 個人戦はどうでも良いから、団体戦で勝ちなさい! 」
これは、有る強豪校に推薦入学した教え子が、最初に言われた言葉です…
その子は、U12の頃に関東ジュニアに出場したものの、その後は中々成績を残すことが出来ておらず、実績が無い状態では推薦ももらえないだろうと、進学先に悩んでいました…
そんな時にまさかの強豪校からの誘いがあり、期待と不安を感じながらも「 頑張ります! 」と決意を胸に入学したのでした…
しかし…
入学し、初練習の時にこれを言われた教え子は、その後の3年間はダブルスの練習しかさせてもらえない日々を過ごしました…
自主練ではシングルスをやったりするものの、部内戦も行われずに監督の一存でメンバーが決まると言う状況だったため、元々中学時代に戦績を収めている選手が優先されることがほとんどだったと言います…
そして迎えた高校最後の年…
新入生に実績のある選手を迎えたことで団体メンバーから外された教え子は、シングルスは県予選にすら出場させてもらうことが出来ずに引退を迎えたのでした…
…まぁ要するに…
育てる気などさらさらなかったと言う事なのでしょう…
元々実績のある選手を全国から集め、保険のダブルス要因としてそこそこの経験者も集めておくことで、団体戦で勝ちやすい状況を確保していたんだと思います…
まるでジュニア選手を商品のように扱うその高校に、今後教え子を行かせることは無いと思います…
② 地方の強豪校に推薦で入学した教え子の場合…(その2)
「 こんなところで負けたら部費が減らされるじゃないか!(怒) 」
これはまた違う地方の強豪校に推薦入学した教え子達が、団体戦で敗退した時に監督とOBに激怒されながら言われていた言葉です!
これをそばで聞いていた僕は〈 何言ってるんだこいつらは!(怒) 〉とかなりイラついてしまいました…
その高校は前年度の優勝校で、第一シードとして出場していましたが、優勝メンバーは一人も残っておらず、新チームで挑んでの敗退でした…
試合内容を見る限り、相手校の選手のプレーの方が明らかに勝っていて、その中でも死力を尽くした上での結果だったので、また次に向けて練習して行こう!と気持ちを新たに再出発させる場面じゃなかったかと思うのですが…
とにかく高校部活では【 団体戦の結果 = 部費 】と言う構図が有り、だからこそ団体戦を中心に力を入れている高校が多いのだと言う事が明確に分かった場面でした…
③ 調子を崩したことでメンバーから外されて…
〈 フォアハンドどうしたの?? 〉
これは、強豪校に推薦で入学し、年始にスクールへと1日だけ顔を出した教え子のプレーを見た時の僕の心の声です…
その子が入学した高校も、インターハイで上位に入ることが多い強豪校で、その子が入学後に関東ジュニアに下の年代で出場し、2R敗退で全日本には出場できなかったものの、ある程度順調に成長しているように見えていました…
しかし、その負けた試合の後に監督にぼろくそに言われながら激怒されている姿を目撃したことで「 この学校もかよ… 」と、がっかりした気持ちにさせられていました…
そんな教え子が参加した年始の練習会、最後に行ったマッチ練習で違和感を感じたのが、その子のフォアハンド!
身体が開いて前に振れておらず、打つたびに弱弱しくショートコートに落ちる状態に…
ビックリして終わった後にどうしたのかを聞きました…
すると、数か月前の練習からおかしくなったらしく、そこからずっとこんな感じだと言うのです!
学校のコーチに相談したかを聞いた所、したけど自分で何とかしろと言われたらしく、〈 何のためのコーチだよ! 〉と思ってしまいました!
流石にヤバいと思い「 来れそうだったら明日もう一度おいで 」と声を掛けましたが、「 明日から寮に戻らないといけない 」とのことで厳しそうです…
一応、今日見た限りの注意点を口頭では伝えましたが、自分の感覚だけでそれを修正するのはなかなか難しいだろうとも思っていました…
それから数か月後に行われた県大会で、その子はシードでありながらまさかの1回戦負けをしてしまい…
調子を戻せなかったことで団体メンバーからも外されて、そのまま引退と言う形になりました…
そんな経験がその子の自信もやる気も失わせる結果となり…
その後の大学からのテニス推薦を断り、普通に入試を受けることで、テニスを辞めると言う選択をしたのでした…
④ 部活の顧問に嫌われて…
「 部活は辞めました… 」
これは少し違う形ですが…
ある強豪校に入学した元々は違うスクールだった子が、高2の終わりに選手クラスに入校して来ました。
その時、高校の部活は辞めて来たと言う事だったので理由を聞いたのです…
すると、部活の顧問の先生に意見を言ったところあからさまにシカとされるようになり、団体メンバーからも外された上に、練習も高校からテニスを始めた子達の中に入れられて、上とは一切やらせてもらえなくなると言う扱いを受けたのだと言います…
そんな毎日が嫌になり、部活を辞め、スクールに入り直すと言う選択をしたのだと言う事でした…
実際一方的な話しなので、顧問の先生の主張もちゃんと聞いてみないと本当の内容は分からないとは思いましたが、この顧問の先生と上手く行かなくてメンバーから外されると言うのはちょこちょこ聞く話しで、最終的に試合に出してもらえないまま最後の年を追える子もいたりするのです…
ここまで4つの例を紹介して来ましたが…
スクールと部活の違いは、なんとなく分かってもらえたんじゃないでしょうか…
本当はまだまだ出し足りないぐらいエピソードが残っていますが…
切りが無いのでこの辺にしておきます…(笑)
❏ 高校部活の良いところ!スクールと手を取り合って育成を考えて欲しい…
実際見て分かったもらえたのではないかと思いますが、高校は団体戦で勝つための選手集めをしていて、総合的に勝つためにダブルスの強化に力を入れている所がほとんどです…
その中で強くなる選手ももちろんいるのですが、もしそのままスクールに通っていたらもっと強くなっていたんじゃないか?とも思ったりしています…
近年は、スクールと提携する形で選手育成に力を入れ、その個々の力で団体戦を勝ち上がっている高校も増えてきていますが、自分が教えたいと考えている先生や、団体戦より個人を重視して教えるスクールの考えを嫌がる先生が多くいるのが現状なのです…
ただ僕は、そんな高校部活すべてを否定しているわけではありません!
個人だけではなく団体によるチームとしての考え方や行動は、人間性を高める上でとても大切だと思っていますし、先輩後輩と言う人間関係を経験することもとても重要な事だと思うのです!
そして、時には理不尽なことを強いられる経験も、その後の人生を乗り越えるために大いに役立つと考えています!
だからこそ訴えたい!
スクールと部活の関係を敵対するものではなく、お互いを信頼し手を取り合うものに変えられませんか?と…
そして、未来ある選手の育成と言う信念を共にもって取り組んで行く事が出来れば…
お互いの良い部分を生かした素晴らしい育成環境が生まれるかもしれないではありませんか!と…
❏ 今現在のスクール側の考え…
今現在、僕らスクール側としては、出来る事なら高校部活には入らず、通信教育でテニスの練習に力を入れたり、国内や国外の※ITF(国際テニス連盟)ツアージュニアに積極的にトライして欲しいと思っています!
※ITFツアージュニアで勝ち上がると世界ジュニアランキングを取得でき、グランドスラムジュニアなどに出場することが出来るようになります。
ちなみに高校の部活に入ると、このITFツアーへの挑戦を認めないところがほとんどで、世界に挑戦すると言う事自体を考えさせようとしない、昔の思考で凝り固まった世界になっています…
その結果、インターハイで優勝した選手がグランドスラムジュニアに出場してると言う事はほとんど無く、グランドスラムジュニアに出場してるのは高校の部活には入っていない他の選手なのです…
昔、松岡 修造( まつおか しゅうぞう )選手が母校である柳川高校を中退し、世界に挑戦すると言う決断をした時、その当時の柳川高校の監督が「 インターハイ前に抜けたあいつは裏切者だ! 」と言い、激怒していたと言う話しを柳川高校出身の友達に聞いたことが有ります…
…これをウィンブルドン ベスト8を成し遂げた後にも言っていたと言うのですから、なんと言うスケールの小さい考え方なのでしょうか…
しかしそれが、今も残る高校部活の監督の思考と言うものなんだと思います…
中学まではスクールで育ち「世界NO.1になりたい!」と夢を語りながら練習していたジュニア達が、高校入学と共に部活と言う小さな枠の中で常識を書き換えられ、卒業するころには「世界NO.1になりたい!」と言う思いは失われた状態になっている…
こんな現状を毎年見せられている僕らの中では、高校部活に対する信頼は地に落ちているのです…
❏ まとめ
ここまで、高校部活の問題について語って来ましたが、このままの状態では日本テニス界にとってマイナスでしかありません!
出来る事ならこの状況が改善され、よりレベルの高い選手を育成できる環境が整って欲しいと思っています!
今や、関東ジュニアや全日本ジュニアで一緒になる各スクールのコーチが口々に言うのが「 U12、U14の頃だけ勝てるテニスにしてはダメだよね。 」と言う、先を見据えた考え方です!
恐らく昔は、目の前の勝利に囚われていたコーチも多かったと思うのですが、今ではコーチたちの考えも変わってきています!
これと同じように、出来る事なら高校部活の先生達の考え方も変わって欲しいと思うのです!
ジュニア選手達を部活で囲い、使い捨てるかのように入れ替えて行くような扱いや、団体戦に全てを賭けさせるような考え方を見直し、選手一人一人の成長を促し、積極的に世界に挑戦させるような考え方に…
そんな取り組みを高校部活とスクールが手を取り合う形で行えるようになれば、強豪高から世界ジュニアランク上位になる選手が多く輩出される! なんて日が来るのではないかと思うのです!
そんな理想のジュニア育成が出来るようになることを熱望するカタルでした。
~おしまい~